蔵出し!文書館 第61回

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収蔵する貴重な学内資料から
140年を超える東大の歴史の一部をご紹介

第61回 魔法書?―ウインドー・アルバムの世界

当館では重厚な革表紙に金属の留め具。まるで古の呪文が書き込まれていそうだと思わず手に取った一冊が、今回紹介する蔵出し資料「アルバム〔人物中心〕」(F0006/S07/SS01/0008)です。

 この資料は、文科大学教授・坪井九馬三(1859~1936)関係資料の一つで、「ウインドー・アルバム」と呼ばれる写真帳です。ページを開くと、額縁にはめ込まれたかのように肖像写真や集合写真が現れます。
19世紀半ば以降の西欧では、名刺代わりに「カルト・ド・ヴィジット」と呼ばれる小型写真を交換することが流行しました。本資料も、こうした写真を差し込み式の窓に収め、鑑賞・保存できる構造になっています。大きさは縦27.3cm、横21.0cm、厚さ7.4cm。全15枚の台紙には、1ページにつき大判写真1枚、または名刺判写真4枚を収めることができ、最大84枚の写真を収納可能です。しかし実際には、収まりきらなかった写真が、台紙の間に数多く挟み込まれています。
 確認できる範囲では、1877(明治10)年から1907(明治40)年頃に撮影、あるいは贈られた写真が収められているようです。そこに写るのは、総長として知られる山川健次郎、後に文科大学長を務めた井上哲次郎、坪井と同年に文学部を卒業し、後に柔道の創始者として知られる嘉納治五郎、そして外国人教師ルートヴィヒ・リースとみられる人物たちです。これらの写真が、どのような意図や意味をもってこの順に並べられたのかを想像することも、この資料の楽しみの一つではないでしょうか。
 さらに興味深いのは、三つの窓に押し花が挟まれている点です。留学先で摘まれたものなのでしょうか。学問という知の記録の間に差し込まれたそのささやかな痕跡からは、学者としての顔とは異なる、坪井の個人的な思いや時間の気配が感じられます。
 このアルバムは、単なる写真の入れ物ではなく、人と人とのつながりや、その場の空気や温度までも封じ込めた一冊の「魔法書」なのかもしれません。

(主事員:村上こずえ)

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